わかりみ.com陸上特殊無線技士編

第3級陸上特殊無線技士【法規・前編】完全攻略ガイド|目的・定義から無線従事者まで

対象読者: 電波法に初めて触れる初学者の方 試験科目: 法規(12問・75%以上=9問以上正解で合格) 試験方式: CBT方式(全国300以上の試験会場で随時受験可能) 合格率: 85〜90%程度 学習時間の目安: 10〜15時間 本記事の範囲: 目的・定義・無線局の免許・無線設備・無線従事者


はじめに

無線技士試験の「法規」科目は、電波法とその関連法令に関する知識を問う科目です。「法律の勉強は難しそう…」と感じる方も多いですが、試験に出るポイントは限られており、正確な用語と数字を覚えることが合格への近道です。

本記事(前編)では、電波法の基本から無線従事者制度までを解説します。後編では無線局の運用・監督・業務書類を扱います。「なぜそのルールがあるのか」という背景も合わせて理解することで、記憶に残りやすくなります。


第1章:目的・定義 ― 電波法のしくみを理解する

電波法とは

電波法は1950年(昭和25年)に制定された法律で、「電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進すること」を目的としています(電波法第1条)。

無線通信は空間を伝わる電波を使うため、同じ周波数を複数の人が勝手に使えば混信が起こり、誰も通信できなくなります。そのため国が電波の使用を管理しており、電波法はそのルールを定めた法律です。

電波法の法令体系

電波法には主な条文があり、それを補完する形で政令・省令が定められています。

法令の種類 名称 内容
法律 電波法 基本的事項を定める(国会で制定)
政令 電波法施行令 法律の委任事項を具体化(内閣が制定)
省令 電波法施行規則 詳細な手続きなど(総務省が制定)
省令 無線局免許手続規則 免許申請の手続き
省令 無線設備規則 無線設備の技術基準
省令 無線従事者規則 資格・免許の詳細
省令 運用規則 無線局の運用方法

重要な定義(電波法第2条)― 試験最頻出

電波法第2条の定義は試験で最も頻出するテーマです。一字一句正確に覚えましょう。

電波(第2条第1号):

三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波

(3THz = 300万MHz。これ以上の周波数は赤外線・可視光線などと呼ばれ、電波法の対象外)

無線電信(第2条第2号):

電波を利用して、符号を送り、または受けるための通信設備

無線電話(第2条第3号):

電波を利用して、音声その他の音響を送り、または受けるための通信設備

無線局(第2条第5号):

無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体。ただし、受信のみを目的とするものを含まない。

無線設備(第2条第4号):

無線電信、無線電話その他電波を送り、または受けるための電気的設備

試験頻出ポイント: 「無線局」の定義に「受信のみを目的とするものを含まない」という限定が入っています。ラジオ受信機だけでは無線局にあたりません。過去問で繰り返し出題されます。

定義の比較整理

用語 ポイント 試験での出され方
電波 上限は300万MHz(3THz) 「3000万MHz以下」などの誤った選択肢に注意
無線局 受信専用は含まない 「受信機も無線局か?」→ 含まない
無線設備 電気的設備(ハードウェア) 操作者は含まない
無線局 設備+操作者の総体 設備だけでも操作者だけでも無線局ではない

第2章:無線局の免許 ― 電波を使うためのルール

無線局の開設と免許

電波は有限の公共資源です。そのため無線局を開設するには、原則として総務大臣の免許が必要です(電波法第4条)。

無免許で無線局を開設したり、許可なく電波を発射したりすると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

免許が不要な場合

例外として、以下の場合は免許が不要です。

  • 発射する電波が極めて微弱(特定の技術基準に適合)な無線局(微弱無線局)
  • 電波の周波数が5.8GHz帯以下で技術基準適合証明を受けた一定の機器(小電力無線局)
  • 受信のみを目的とする受信機(無線局の定義に含まれないため)

身近なものでは、テレビリモコン(微弱無線局)やBluetooth機器(小電力無線局)が免許不要です。

免許の手続き(流れ)

申請(総務大臣へ)
  ↓
審査(電波法令への適合確認)
  ↓
予備免許(工事・試験のための電波発射が可能に)
  ↓
工事落成(設備の設置完了)
  ↓
検査(省略できる場合あり)
  ↓
本免許の交付

予備免許: 正式な免許の前段階として交付される仮の免許。予備免許中は無線設備の工事や試験のための電波発射が認められます。

検査の省略: 法令に適合していることが確実と認められる場合(技術基準適合証明を取得している場合など)は、検査が省略されることがあります。

免許の有効期間と再免許

無線局の免許の有効期間は原則5年です。引き続き無線局を運用するには、有効期間満了前に再免許申請を行う必要があります。

手続き 期限
再免許申請 有効期間満了の1ヶ月以上6ヶ月以内前まで

5年の有効期間が終了しても再免許申請すれば継続して運用できます。しかし申請を忘れると免許が失効し、無免許状態になってしまいます。

免許状の記載事項

免許状には以下の事項が記載されます。

  • 無線局の種別・目的・通信の相手方・通信事項
  • 無線設備の設置場所(移動局の場合は移動範囲)
  • 識別信号(コールサイン)
  • 電波の型式・周波数・空中線電力
  • 免許の有効期間

免許状の変更(試験頻出)

免許状に記載された事項を変更するには、総務大臣の許可または届出が必要です。

変更の種類 手続き
電波の型式・周波数の指定の変更 総務大臣に申請する(届出ではない)
無線設備の設置場所の変更 事前に総務大臣の許可が必要
周波数・電波型式・空中線電力の変更 事前に許可申請が必要
無線設備の軽微な変更 工事終了後に届出
免許状の記載事項に変更が生じたとき 免許状を総務大臣に提出して訂正を受ける

試験頻出ポイント: 「電波の型式及び周波数の指定の変更を受けようとするとき」→「総務大臣に申請する」(過去問No.3問2)。「届け出る」「免許状を提出して訂正を受ける」などとの混同に注意してください。

試験頻出ポイント: 「無線設備の設置場所を変更しようとするとき」→事前に総務大臣の許可が必要(過去問No.1問2)。「運用開始」「休止」「廃止」には許可は不要です。

試験頻出ポイント: 変更工事の許可を受けた場合、「総務大臣の検査を受け、当該工事の結果が許可の内容に適合していると認められた後」でなければ、変更後の無線設備を運用してはなりません(過去問No.2問2)。

無線局開設の免許欠格事由(試験頻出)

次の者は無線局の免許を与えられないことがあります(電波法第5条)。

  • 電波法に規定する罪を犯し罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わった日から2年を経過しない者(過去問No.3問1)

試験頻出ポイント: 「刑法の罪で懲役」「無線局を廃止した」「免許取消から5年未満」などは欠格事由ではありません。「電波法に規定する罪、かつ罰金以上、かつ2年を経過しない」の3点セットが正解です。


第3章:無線設備の技術基準 ― 電波の「質」を守る

電波の質(電波法第28条)

電波法では、発射する電波の「質」として以下の3点を定めています。

  1. 周波数の偏差: 発射する電波の周波数が、許可された周波数からのずれ
  2. 周波数の幅: 発射する電波が占める周波数の幅(帯域幅)
  3. 高調波の強度等: 本来発射すべき電波以外の不要電波(スプリアス)の強さ

これらの基準に適合した無線設備でなければ使用できません。

空中線電力

空中線電力(送信出力)とは、送信機から空中線(アンテナ)に供給される電力です。

空中線電力に関するルール:

  • 許可された空中線電力の範囲内で運用すること
  • 通信を行うときは、できるだけ小さい電力で行うこと(電波資源の有効利用のため)

「できるだけ小さい電力で」という規定は、必要以上の電力で電波を出すと他の無線局に混信を与える可能性があるためです。

電波型式の表示(試験頻出)

電波の型式は3文字の記号で表します。この読み方は毎回必ず出題される重要テーマです。

1文字目:主搬送波の変調の型式

記号 変調方式 内容
A AM(振幅変調) 両側波帯(DSB)
F FM(周波数変調) 角度変調
J SSB(単側波帯) 抑圧搬送波方式
N 無変調 搬送波のみ

2文字目:変調する信号の性質

記号 信号の種類
0 変調信号なし 無変調
1 デジタル信号(副搬送波なし) デジタル通信
3 アナログ信号(音声等) 通常の音声通信

3文字目:伝達情報の型式

記号 情報の種類
E 電話(音声)
N 情報なし
D データ

試験に頻出する電波型式:

型式 名称 用途
A3E AM両側波帯電話 AM放送、航空無線(VHF帯)
F3E FM電話 業務用FM無線(タクシー・消防等)
J3E SSB電話 短波通信、海上通信

試験頻出ポイント: 「F3E」はFM電話の型式記号です。三陸特で使用する業務用無線機のほとんどはF3Eです。この型式の読み方は必出です。


第4章:無線従事者 ― 資格と操作範囲

無線従事者とは

無線局を操作するには、無線従事者の資格が必要です(電波法第39条)。無線従事者免許は総務大臣が交付します。

資格のない人が無線局を操作することは原則として禁止されています。ただし、主任無線従事者の監督のもとでは資格を持たない人も一定の操作が認められます。

第3級陸上特殊無線技士の操作範囲(試験頻出)

三陸特の操作範囲は電波法施行令で次のように定められています。

操作範囲①(主な操作範囲):

  • 陸上の無線局の無線設備(レーダー・多重無線設備を除く)
  • 周波数:25,010kHzから960MHzまで
  • 空中線電力:50W以下

操作範囲②(1,215MHz以上の技術操作):

  • 陸上の無線局の1,215MHz以上の周波数の無線設備(レーダー・多重無線設備を除く)の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないもの
  • 空中線電力:100W以下

試験頻出ポイント①: 「50ワット以下の場合、操作できる周波数の範囲は?」→「25,010kHzから960MHzまで」(過去問No.2問5)。「25,010kHz以上」という開かれた表現でなく、上限の「960MHz」まで含める点に注意してください。

試験頻出ポイント②: 「1,215MHz以上の設備の技術操作ができるのは何ワット以下?」→「100ワット以下」(過去問No.1問5)。50Wではなく100Wである点と、「外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないもの」という限定条件を覚えましょう。

平たく言えば: 業務用無線(タクシー・消防・警察など)のVHF・UHF帯の無線機の操作ができます。

資格区分の概要

陸上特殊無線技士には1〜3級があります。

資格 電力の主な目安 周波数の主な目安
第1級陸上特殊無線技士 制限なし すべての陸上無線局の技術操作
第2級陸上特殊無線技士 50W以下(1,215MHz未満)、10W以下(1,215MHz以上) マイクロ波帯も操作可
第3級陸上特殊無線技士 50W以下 25,010kHz以上(多重除く)

上位資格を持っていれば、下位資格で操作できるものはすべて操作できます。

主任無線従事者

主任無線従事者は、無線局の無線設備の操作を行う者を監督する者として選任されます(電波法第39条)。

主任無線従事者の義務:

  • 選任された日から6ヶ月以内に「主任無線従事者講習」を受講しなければならない(無線従事者規則)

主任無線従事者制度のメリット:

  • 主任無線従事者の監督のもとでは、無線従事者の資格を持たない者でも一定の操作を行うことができる
  • これにより、すべての操作要員が資格を持つ必要がなくなり、業務の効率化が図れる

無線従事者免許証

免許証の特徴:

項目 内容
記載事項 氏名と生年月日(住所は記載されない)
有効期間 終身有効(更新不要)
携帯義務 無線局の操作中は常に携帯する

免許証は一度取得すれば更新の必要がなく、生涯使用できます。業務従事中は常に携帯しなければなりません(「通信室に保管」「通信室に掲げる」「無線局に備え付ける」はいずれも誤り)。

無線従事者免許の欠格事由(試験頻出)

次の者には無線従事者の免許を与えないことができます。

  • 無線従事者の免許を取り消され、取消しの日から2年を経過しない者(電波法第42条)

試験頻出ポイント: 「2年を経過しない者」が正解(過去問No.2問4、No.3問4)。「1年」「6箇月」「5年」などとの混同に注意。また「日本の国籍を有しない者」「引き続き5年以上操作しなかった者」は欠格事由ではありません。

無線従事者免許証の再交付(試験頻出)

以下の場合に免許証の再交付を申請できます。

再交付できる場合 再交付できない場合
免許証を汚したとき 住所に変更を生じたとき(住所は免許証に記載されないため)
免許証を失ったとき
氏名に変更を生じたとき

試験頻出ポイント: 「住所に変更を生じたとき」は再交付の対象外です(過去問No.2問6)。免許証には住所が記載されないため、住所変更があっても免許証の再交付手続きは不要です。

失った免許証を発見したとき(試験頻出)

免許証を失ったために再交付を受けた後、失った免許証を発見したときは:

発見した日から10日以内に、発見した(古い)免許証を総務大臣に返納しなければならない。

(過去問No.3問6)

試験頻出ポイント: 返納するのは「発見した(古い)免許証」であり、「再交付を受けた(新しい)免許証」を返納するわけではありません。また「速やかに廃棄」は誤りで、総務大臣への返納が義務です。

無線従事者の選任・解任の届出(試験頻出)

無線局の免許人は、無線従事者を選任または解任したときは:

遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。

(過去問No.1問12)

試験頻出ポイント: 「遅滞なく届け出る」が正解。「1箇月以内に報告する」「2週間以内に届け出る」「速やかに承認を受ける」などは誤りです。


前編のまとめと試験対策

この範囲の頻出テーマ(過去問3回分の出題実績)

順位 テーマ 出題回数(3回中) 出題形式
1 無線局の定義(受信専用を含まない) 3回 選択
2 電波の質の定義(周波数の偏差及び幅、高調波の強度等) 3回 穴埋め
3 無線従事者の定義(操作又はその監督を行う者) 3回 穴埋め
4 三陸特の操作範囲(50W以下は960MHzまで、1,215MHz以上は100W以下) 3回 選択
5 免許証携帯義務(業務従事中は携帯) 3回 選択
6 無線設備の設置場所変更→許可が必要 1回 選択
7 電波型式・周波数の指定変更→「申請」 1回 選択
8 電波型式(F3E:FM電話) 1回 選択
9 無線従事者免許欠格事由(取消後2年未満) 2回 選択
10 失った免許証発見→10日以内に返納 1回 選択
11 無線従事者の選任・解任→遅滞なく届け出 1回 選択
12 変更工事後→検査を受けた後に運用可 1回 選択

重要な数字まとめ

事項 数値
電波の定義上の上限周波数 300万MHz(3THz)
無線局免許の有効期間 5年
再免許申請の期間 満了の1ヶ月以上6ヶ月以内
三陸特の操作可能電力(25,010kHz〜960MHz) 50W以下
三陸特の操作可能電力(1,215MHz以上の技術操作) 100W以下
三陸特の操作可能周波数(50W以下の場合) 25,010kHzから960MHzまで
主任無線従事者講習の受講期限 選任後6ヶ月以内
無線従事者免許証の有効期間 終身有効
無線従事者免許欠格事由の期間 取消後2年を経過しない者
失った免許証発見後の返納期限 発見後10日以内

重要用語チェックリスト(★は過去問3回中2回以上出題)

目的・定義

  • ★ 電波の定義(上限:300万MHz以下)
  • ★ 無線局の定義(設備+操作者の総体、受信専用は含まない)
  • 無線設備の定義(電気的設備のみ)

無線局の免許

  • 免許手続きの流れ(予備免許→工事落成→検査→本免許)
  • 無線設備の設置場所変更→事前に許可が必要
  • 変更工事後→総務大臣の検査を受けた後に運用可
  • 電波の型式・周波数の指定変更→「申請」(届出ではない)
  • 免許状の記載事項変更→免許状を提出して訂正を受ける
  • 無線局免許の有効期間(5年)と再免許申請期間(1〜6ヶ月前)
  • 無線局免許欠格事由(電波法の罪・罰金以上・2年未満)

無線設備

  • ★ 電波の質(周波数の偏差及び幅、高調波の強度等)
  • ★ 電波型式の読み方(F3E:FM電話、A3E:AM電話、J3E:SSB)

無線従事者

  • ★ 無線従事者の定義(操作又はその監督を行う者)
  • ★ 三陸特の操作範囲(25,010kHz〜960MHz・50W以下、1,215MHz以上・100W以下)
  • ★ 免許証の携帯義務(業務従事中は「携帯する」)
  • 無線従事者免許欠格事由(取消後2年未満)
  • 免許証再交付:汚損・紛失・氏名変更→可、住所変更→不可
  • 失った免許証を発見→10日以内に発見した免許証を総務大臣へ返納
  • 主任無線従事者の講習期限(6ヶ月以内)
  • 無線従事者の選任・解任→遅滞なく総務大臣に届け出

本記事は試験対策を目的とした学習用コンテンツです。後編(運用/監督/業務書類)と合わせてご活用ください。最新の試験情報は日本無線協会の公式サイトでご確認ください。

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